【7月28日 AFP】米名門ハーバード大(Harvard University)の黒人教授、ヘンリー・ルイス・ゲイツ(Henry Louis Gates)氏が白人警官に誤認逮捕された問題で、通報した女性と警察の会話の録音テープが公開された。

 通話記録によると、通報者の女性は「容疑者」の人種や、住居侵入行為かどうかについての認識はなかったようだ。警察はテープを公開することで、人種差別に基づく誤認逮捕との批判に対抗する狙いがあるとみられる。

 国際的にも著名なアフリカ系米国人研究の第一人者であるゲイツ教授は16日、旅行先からマサチューセッツ州ケンブリッジ(Cambridge)の自宅に帰宅したが、鍵を持っていないことに気付き、運転手とともにドアを押しあけようとしていたところ、これを見かけた通行人の女性が警察に通報。駆け付けた警察官に、ゲイツ教授は身分証明書を提示し、人種差別だと抗議したが、公共秩序を乱した行為で逮捕された。

 教授は警察で4時間、拘置されたが、警察が全ての嫌疑を取り下げ、釈放された。

 一方、公開された通話記録によると、通報者の女性は警察に「何が起きているのか、よくわからない」と語っている。「この家の住人たちが、鍵が開けられなくて困っているだけかもしれない。でも、ドアに体当たりしている。今、家の中に入った」

 この後、女性が「男性2人はスーツケース2個を持っている」と報告したところ、警察の電話交換手が聞き返した。「白人、黒人、それともヒスパニックですか?」

 女性は、「2人とも大柄な男性で、1人はヒスパニックのように見えるが、よくわからない。もう1人は、室内に入ってしまったので見ていない」と答えている。

 これに対し、交換手は「1人はヒスパニック系の可能性があるが、容疑者の人種は不明」と巡回中の警官に伝えた。

 また、録音テープの後半では、警察官が「容疑者(ゲイツ教授)」について「非協力的」と話す声が聞こえる。ゲイツ教授の声は明確には聞き取れない。

 ゲイツ教授は釈放後、自分は人種偏見に基づいた捜査の犠牲者だと主張。事件は、すぐさま、全米を巻き込む論争に発展した。

 教授の友人であるバラク・オバマ(Barack Obama)大統領も「警察は愚かな行為をした」と発言した。しかし、これが論議の的となったことから、後にオバマ大統領は発言は不適切だったと認めた。

 だが、ゲイツ教授が警察に謝罪を要求する一方で、警察側は、ゲイツ教授は取調中、警官をののしったうえ、身分証明の提示を拒否したため、同氏を逮捕したと主張し、オバマ大統領に謝罪を求める事態となっている。

 事態の沈静化を図りたいオバマ大統領は、教授を誤認逮捕したジェームズ・クローリー(James Crowley)巡査部長とゲイツ教授の双方に電話をかけ、ホワイトハウス(White House)に招待した。ビールを飲みながら、3人で語り合おうと話したという。ホワイトハウスによると、両者とも招待を承諾した。(c)AFP/Marcia Scott Harrison