【7月27日 AFP】中国・吉林(Jilin)省通化(Tonghua)市の鉄鋼大手・通化鋼鉄集団(Tonghua Iron and Steel Group)で24日、業界再編に伴う解雇を示唆された労働者が、同社の買収計画を進めていた同業の建竜鋼鉄(Jianlong Steel、本社北京)の社長を殴り殺すという事件が起きた。事態を受けて当局は27日、買収計画の中止を発表した。

 国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)によると、民間企業の建竜鋼鉄の陳国軍(Chen Guojun)社長は同日、通化鉄鋼の工場を訪れ、同社の買収を発表。「労働者の多くを3日以内に解雇すると告げて、労働者を幻滅させ、怒らせた(地元警察官)」という。

 約3000人の労働者が工場を占拠して抗議し、陳社長を何回も殴打。その後、警官隊と衝突した。労働者らは、救急隊が重傷を負った陳社長を搬送するのを妨害し、陳社長は病院で死亡が確認されたという。

 国営新華社通信(Xinhua)は27日、この事態を受けた政府当局が「労働者によるデモ拡大を防ぐために」、通化鋼鉄の買収計画を中止したと報じた。

 これに先立って、香港(Hong Kong)の中国人権民主化運動情報センター(Information Centre for Human Rights and Democracy)は声明で、通化鋼鉄で労働者3万人が抗議行動を起こし、警官隊との衝突で100人が負傷したと公表していた。

 同センターによると、建竜鋼鉄は通化鋼鉄に資本参加していたが、労働者は経営に不満があり、建竜鋼鉄が出資比率を65%まで引き上げる買収計画に反対していた。労働者たちは、通化鋼鉄の年金受給者が月々200元(約2800円)ほどしか受給していないことに対し、陳氏が300万元(約4200万円)もの給与を得ていたことに不満を持っていたという。

 中国政府は、国際競争力を高めるため、数百の中小企業からなる鉄鋼業界の再編を進めている。(c)AFP