【6月21日 AFP】米最高裁は18日、有罪確定後の受刑者には、無罪を証明するためにDNA鑑定を要求する憲法上の権利はないとする判断を下した。判事9人の意見は5対4と、真っ二つに割れた。

 94年にアラスカ(Alaska)州で発生した強姦事件で、禁固26年の刑を受け服役中のアフリカ系アメリカ人、ウィリアム・オズボーン(William Osborne)受刑者に対し、アラスカ州の連邦裁が、DNAの再鑑定の請求を認めたことについて、最高裁は誤った判断だったとみなした。

 米国のなかでアラスカ州は、有罪確定後のDNA再鑑定を認めていない6州のうちのひとつ。州当局が申し立てていた、DNA再鑑定の請求権を誰がもつかを決定するのは州議会であるべきだという主張が認められた。

 ジョン・ロバーツ(John Roberts)連邦最高裁長官は法廷意見のなかで「DNA鑑定には、誤って有罪とされた者の潔白を証明するうえでも、有罪である者を特定するうえでも比類のない能力がある。同時にDNA鑑定だけで常に事件が関係するわけでもない。ほかに有罪を示す十分な証拠と、DNA鑑定の結果に対する説明が存在するときは、科学のみでは受刑者の無罪は証明できない」と述べた。

 当初の裁判でオズボーン受刑者の公選弁護人は、かえって有罪の確証になってしまう可能性があるとして、受刑者のDNA鑑定を拒んだ。その結果、オズボーン受刑者が受けたDNA鑑定は正確度がより低いもので、そこで全人口の15%にしかみられないDNA型が示された。この結果と、共犯として起訴されていた人物の供述とによって、陪審はオズボーン受刑者を有罪とした。

 控訴が却下された時点で、オズボーン受刑者はDNA鑑定の再実施を求めた。この抗告はアラスカ地裁には却下されたが、さらに上の連邦裁は再鑑定を認めたため、アラスカ州側が最高裁に判断を求めていた。

 エリック・ホルダー(Eric Holder)司法長官は18日の最高裁判断にすばやく反応し「受刑者にはさまざまな環境でDNA鑑定が認められるべきだというのが、現政権の考えだ。(地方自治体や州など)すべてのレベルの政府が連邦政府の方針にならい、DNA鑑定の実施条件を広げる努力に期待する」と談話を発表した。

 さらにホルダー長官は「今日の(最高裁の)判断は限定的なものだ。裁判所が示したものは何が合憲かどうかだけで、政策のよしあしではない。そこには根本的な違いがある」と述べた。

 一方、米上院司法委員会のパトリック・レーヒー(Patrick Leahy)民主党上院議員は、「今回の最高裁判断は、この事件だけでなくほかの多くの事件についても真実を突き止めるうえで、新たな障害と不必要なハードルを生んだだけだ」と述べ、最高裁の判断に失望を表した。(c)AFP