【6月18日 AFP】米アリゾナ(Arizona)州の刑務所で、女性の受刑者が炎天下の屋外施設で死亡し、人権活動家らが「中世同然の残酷な監禁状態」と非難するなど、同州の刑務所のあり方をめぐり論議が巻き起こっている。

 死亡したのは売春の罪で27月の禁固刑に服していたマルシア・パウエル(Marcia Powell)受刑者(48)。3月19日に精神衛生施設に移送される際、砂漠で太陽が照りつける気温42度の猛暑のなか、まったく覆いのない監房に4時間弱にわたって入れられた後に意識を失い、翌日病院で死亡した。

 この件について、アリゾナ州更正・矯正局(Arizona Department of Corrections)は、刑事事件として捜査を始めている。同局広報官は月末に結果を出したいとの見通しを示したほか、「同受刑者がその監房に入れられていたのは2時間とみている」と明らかにした。

 パウエル受刑者の死後、アリゾナ州内の10か所の拘置・刑務所にあった同様の監房233室はすべて使用停止となった。広報官によると、そうした屋外設置の監房は1960年代から、受刑者の移送の際に使用されていた。

 チャールズ・ライアン(Charles Ryan)アリゾナ州更正・矯正局長は、パウエル受刑者を衰弱させた原因は、この収容システムだと認めている。

 一方、受刑者の人権を擁護する活動家らは、屋外監房は基本的人権を侵害していると糾弾している。

 同州の団体「ミドル・グラウンド・プリゾン・リフォーム(Middle Ground Prison Reform)」のドナ・レオーネ・ハム(Donna Leone Hamm)さんは「アリゾナ州で日陰も飲み水もなしに飼い犬を戸外に出しておくのは、時間の長さに関係なく残酷な行為。更正・矯正局がこうしたことを日常的に受刑者に行っているとは、アリゾナ州の人権意識の低さがうかがいしれる」と非難する。

 ハムさんはアリゾナ当局には公平な調査を期待できないとして、司法省と米連邦捜査局(FBI)に独立捜査の実施を求めている。

 同州では、夏季の気温は36度から49度以上にまで上昇する。砂漠での生存条件に詳しい専門家らによると、健康な男性でも気温約38度のなかに飲み水なしで5時間放置されると死亡するという。(c)AFP/Scott Seckel