【4月15日 AFP】(一部訂正)米連邦控訴裁判所は14日、第2次世界大戦中にナチス(Nazi)の強制収容所で看守を務めユダヤ人数万人の殺害に関与した疑いでドイツの裁判所から逮捕状が出ている、米オハイオ(Ohio)州在住のジョン・デムヤンユク(John Demjanjuk)容疑者(89)について、米当局に対し、強制送還の執行停止を命じた。裁判所決定は、米当局が同容疑者を車イスに乗せドイツに送還しようとした直後に出された。

 同容疑者は14日未明、米連邦控訴裁判所に対し、ドイツへの身柄引き渡しを阻止するための、国外追放処分の差し止めを求めていた。控訴裁判所は「国外追放の差し止め請求は認められた。請求で示された事実について、引き続き審査する」としている。

 同容疑者は、第2次世界大戦中の1943年、現在のポーランドにあるソビブル(Sobibor)とマイダネック(Majdanek)の強制収容所でナチスに協力し、約2万9000人のユダヤ人殺害に関与した容疑がかかっている。

 デムヤンユク容疑者は、イスラエルで戦争犯罪に問われて裁判にかけられ1988年に死刑判決を受けたが、その後、同国最高裁が証拠不十分として判決を覆した。その後、1958年に取得した米国籍の維持をめぐって、数年間にわたって裁判で争っている。

 米移民税関捜査局(Immigration and Customs EnforcementICE)によると、デムヤンユク容疑者は拘束をとかれ、足首に電子追跡装置をつけた上で自宅に戻ることを許可された。

 米司法省とICEの双方とも、米政府はこの件に関し「訴訟を継続」し、同容疑者の送還が達成できるよう独当局と緊密に連携していくとだけ述べ、詳細については言及を避けている。(c)AFP/Dick Russ