【10月15日 AFP】アルビノ(先天性白皮症)のリチャードさん(19)は、前週、近所の人から「お前はつけ狙われている」と警告された。彼は恐怖に駆られて森の中に逃げ込み、2日間そこで息をひそめていた。そうした「連中」につかまるとどうなるかを、充分に理解しているからだ。

  ここは東アフリカ・ブルンジ東部のルイギ(Ruyigi)県。同地域では最近、アルビノが殺害されて遺体が切断される事件が続発している。リチャードさんによると、そうした身体の一部は、隣国タンザニアの呪術師に売られるのだという。「アルビノの身体の一部を持って金鉱山へ行けば、金が地表に沸いてくると言われている。釣りの餌として使用すれば、おなかに金の詰まった大きな魚が釣れるとも言われているんだ」

 リチャードさんは、現在、主任検察官のニコデメ・ガヒンバレ(Nicodeme Gahimbare)氏宅に身を寄せている。周囲に高さ3メートルの壁に囲まれたこの家は、アルビノ25人が隠れ住む避難所となっている。「政府、警察、自治体の議員、アルビノの代表者らと協議し、ルイギ県に住む45人のアルビノ全員をここにかくまうことにした」とガヒンバレ氏。

■タンザニアの需要がブルンジにも波及

 警察は、アルビノの手足、臓器、血液がタンザニアに運ばれ、呪術師に売られていることを確認している。呪術師がそれらを調合してお守りを作るのだ。タンザニア北部ではアルビノ殺害事件が続出しており、同国の大統領はアルビノを保護するための対策を打ち出している。

 タンザニアでのこうした「高い需要」は、ブルンジにも波及している。中でも、呪術が深く根を降ろしているルイギ県のアルビノは、差し迫った身の危険を感じている。

 アルビノのエフレム君(8)は、父親に連れられて、10キロ以上歩いて避難所のガヒンバレ氏宅にやってきた。子ども10人中、アルビノが2人いると言うこの父親は、「自宅からさほど離れていない場所で、わたしの子どもによく似た少女が殺された。手は切断され、血も抜かれていた。子どもたちの今後を思い、ぞっとしたよ」と話す。

 この時、ちょうど1台の車が父子の前で止まり、ルイギまで乗せていってあげようと持ちかけられたが、エフレム君は半狂乱になり、乗車を拒んだ。父親は運転手の申し出を丁重に断りながら、「あの事件以来、息子は恐怖にとりつかれている。道を歩いている時に、『カネの成る木が通るぞ』などとささやかれる」とつぶやいた。

 皮膚、目、髪の毛のメラニン色素が先天的に欠乏しているアルビノは、太陽光を避ける必要があるが、アフリカでは差別にも耐えねばならない。しかしタンザニアやブルンジのアルビノたちには、それ以上の危険が待ちかまえている。ガヒンバレ検察官によると、アルビノ1体は6億タンザニアシリング(約5200万円)で売買されているという。(c)AFP/Esdras Ndikumana