【7月17日 AFP】オプティカル・アートの先駆者ヴィクトル・ヴァザルリ(Viktor Vasarely)の義娘で、ヴァザルリの作品などを他人のギャラリーの保管庫から運び出そうとして逮捕されたミシェル・タブルノ・ヴァザルリ(Michele Taburno-Vasarely)容疑者が、不法侵入と窃盗の罪で起訴された。検察当局が16日、明らかにした。

■消失した絵画1300点とシルクスクリーン1万8000点

 今回の事件は、1971年にハンガリー出身のヴァザルリが、自分の作品を第2の故郷、フランスの財団に寄付すると決めたところから始まる。しかし、1990年にヴァザルリの妻が亡くなると、2人の息子が財団の運営や資産分与をめぐり、争い始めた。その10年ほど前に財政再建のため財団に雇われた弁護士を2人は横領で訴え、この弁護士は2005年、被告不在のまま1年の禁固刑を言い渡された。

 ヴァザルリの家族には1995年、絵画のうちの大半の管理権が認められた。しかし度重なる論争の間に、財団に寄贈された1300点の絵画と1万8000点のシルクスクリーンのほとんどは紛失していた。

■シカゴのギャラリー倉庫に数千点

 そして話は、今回のシカゴの事件へとつながる。

 6月20日、米シカゴ(Chicago)にあるトーマス・モナハン(Thomas Monahan)さんのギャラリーの保管庫から、同じビルにある別の保管庫へヴァザルリ作品を移動しようとしたタブルノ・ヴァザルリ被告が、窃盗容疑で逮捕された。

 持ち出そうとした作品の総額は57万5000ドル(約6100万円)相当で、モナハンさんの弁護士によると、モナハンさんが所有権を有するものも含まれていたという。

 モナハンさんはヴァザルリ作品数千点を保管してきた。しかし、フランスで調査が行われているという話を聞き、自分が保管する作品の出所に疑問を抱き始めたという。モナハンさんの弁護士は、正当な権利所有者が明らかになるまで、それらの作品を取り引きすべきではないと助言。しかし、タブルノ・ヴァザルリ被告の弁護士は、そもそもモナハンさんにはそうする権利もないとし、被告の許可なしに作品を売却しようとしたと非難している。

 起訴を受けてタブルノ・ヴァザルリ被告は、運び出そうとした作品の法的権利は自分が保持していると主張。「起訴されたことが有罪を意味するわけではない」と語り、裁判で疑惑を晴らすと訴えた。弁護士によれば、被告は許可なく絵画を売却しようとしたディーラーから、自分の財産を守ろうとしただけだという。

 起訴状と罪状の詳細は明らかにされていないが、有罪となれば住居侵入罪は最高禁固7年、窃盗罪は最高禁固15年の可能性がある。

 第1回の公判は8月6日に予定されている。(c)AFP