【6月20日 AFP】米アリゾナ(Arizona)州グランドキャニオン(Grand Canyon)で2006年に日本人旅行者の花牟礼智美(Tomomi Hanamure)さん(当時34)が殺害された事件で、米連邦地裁は19日、ランディー・ウェスカガミ(Randy Wescogame)被告(20)に仮釈放なしの終身刑を言い渡した。

 事件は、2006年5月9日、単独で米国を旅行していた花牟礼さんが、ハバスパイ先住民居住区(Havasupai Indian Reservation)にある観光スポットの滝を見に行くと言って宿泊施設を出た後、行方がわからなくなったもの。花牟礼さんは、数日後に人里離れた河岸で刺殺体で見つかった。

 その後、ウェスカガミ被告が逮捕され、花牟礼さん殺害の事実を認めた。検視報告によると刺し傷は30か所にものぼったという。

 判決読み上げに際し、メアリー・マーギア(Mary Murguia)判事は「被害者は、グランドキャニオンの美を楽しむ予定だった34歳の誕生日に、人間社会の醜悪さの最たる事件に遭遇してしまった」と花牟礼さんの遺族へ同情を示した。

 さらに事件を「いわれなく説明のしようもない残虐な殺人」と断じ、ウェスカガミ被告の行為は「被告の家族や部族だけでなく、米国の名誉をも傷つけた」と厳しい非難の言葉を投げかけた。

 公判では花牟礼さんの父親が、異国で娘の命を奪われたつらい心情を述べた。通訳を通して父親の言葉を聞いたウェスカガミ被告は頭をうなだれ、被害者の遺族のために毎日神に祈っていると述べた。

 被告が属するハバスパイ先住民は、数百年前からグランドキャニオンに居住する部族で、現在は650人ほどのコミュニティを結成している。

 最も近い公道からも16キロ離れたハバスパイ先住民居住区への到達手段は、徒歩か馬やヘリコプターしかない。現在もラバが引く荷車で郵便物が配達されている地域は、全米でも同居住区だけだという。(c)AFP