【6月9日 AFP】米ボストン(Boston)郊外で2006年に英国人男性が妻子を射殺したとされる事件の公判で6日、被告弁護人が陪審団に対し、被告側弁論が「生々しく」「陰惨な」内容になるため心の準備をするよう異例の要請を行った。

 事件は06年1月、ボストン郊外の高級住宅地にある英国人のニール・エントウィッスル(Neil Entwistle)被告(29)の自宅で、米国人の妻レイチェル(Rachel Entwistle)さん(当時27)と娘のリリアンちゃん(同9か月)の射殺体が発見されたもの。

 レイチェルさんは頭部を、レイチェルさんの腕に抱かれたリリアンちゃんは腹部を撃ち抜かれていた。リリアンちゃんを撃った銃弾はリリアンちゃんの身体を貫通しレイチェルさんの身体に達していた。

 凶器とみられるレイチェルさんの父親の銃からエントウィッスル被告のDNAが検出され、被告が借りたレンタカーがボストンのローガン(Logan)空港で発見されたため、警察は同被告を国際指名手配。同年2月8日に、ロンドン(London)でエントウィッスル被告を逮捕し、公判のため米国に身柄を移送した。

 米マサチューセッツ(Massachusetts)州ミドルセックス(Middlesex)郡地裁で開廷中の公判で、被告側弁論を担当するエリオット・ウェインシュタイン(Elliot Weinstein)弁護士は、陪審員を務める男女8人に対し、弁論内容は「おぞましいもの」であるうえ、生々しい画像証拠を用いる予定だと説明。あらかじめ「心の準備」をするよう要請した。

 エントウィッスル被告は無罪を主張しており、先に証言を行ったレイチェルさんの母親は、エントウィッスル被告の行状について、家事をよく手伝い夜泣きするリリアンちゃんをなだめることもある良い父親だったと語っている。

 しかし検察側が語る被告像は、英国の大学で知り合ったレイチェルさんと結婚後、職を求めて米国に渡ったものの上手くいかず、インターネットのポルノサイトに興じる性倒錯者というものだ。

 事件の数日前、同被告はデッキチェアに座り、「寝室でやる方が楽しいんだけどね」などと言いながら自慰行為にふける自分の映像をインターネットに投稿したとされる。

 エントウィッスル被告は親戚に、英軍のコンピュータープログラムのコンサルタント業で月1万ドル(約105万円)の収入があると話していた。しかし、レイチェルさんは夫の海外口座は凍結されていると両親に語っていたという。

 裁判文書によると、失業中にも関わらずエントウィッスル被告は、カード払いで贅沢な暮らしを続けていたという。

 エントウィッスル被告の起訴罪状は殺人2件および銃器不法所持2件で、殺人について有罪となれば仮釈放なしの終身刑が確定する見込みだ。(c)AFP/Marcia Scott Harrison