【6月3日 AFP】米カリフォルニア(California)州在住のブロガーがシンガポール最高裁判事に対する侮辱罪で、シンガポール当局に逮捕、起訴された。弁護人らが2日明らかにした。

 逮捕されたのは、シンガポール出身の元弁護士で、現在は米国籍のゴパラン・ネア(Gopalan Nair、58)被告。弁護人によると、被告は公務員を侮辱したとして、前月31日にシンガポールで逮捕され、2日に起訴された。

 裁判所の文書によると、ネア被告は前月29日、リー・クアンユー(Lee Kuan Yew)元首相らが野党幹部を名誉棄損で訴えた裁判について、ベリンダ・アン・ソウ・エァン(Belinda Ang Saw Ean)最高裁判事に電子メールを送り、判事はリー親子の使用人以外の何ものでもない、彼らの指示に従うことで「身を売った」と厳しく非難、侮辱した。

 アン判事は前週、リー元首相や息子のリー・シェンロン(Lee Hsien Loong)現首相ら政治指導部に名誉毀損で訴えられた野党シンガポール民主党(Singapore Democratic PartySDP)のチー・スンジュアン(Chee Soon Juan)書記長(45)の公判で、同書記長に「売女」などと侮辱された。判事は書記長に法廷侮辱罪で12日間の禁固刑を、書記長の姉妹のSDP議員にも同罪で10日間の禁固刑を言い渡した。2人は上告中のため身柄拘束は免れている。

 被告の弁護人によると、判事宛ての問題の電子メールは、被告が公判内容をブログに最近書いたことをそのまま転載しただけだという。

 さらにネア被告は、シンガポールを訪れた前月31日、滞在ホテル名や電話番号をブログに掲載し、「シンガポール司法権の管轄内にやってきた。さあ、どうする?」とシンガポール当局を挑発したとされる。

 在シンガポール米国大使館もネア被告の逮捕を確認し、「状況を注視している」と発表した。

 ネア被告の公判は9日に開始される見通し。弁護人によると、さらなる取り調べが必要だとして当局により、拘置期間が1週間延長されている。シンガポールでは公務員を侮辱した場合、5000シンガポール・ドル(約52万円)以下の罰金か1年の禁固刑が科される。(c)AFP