【5月19日 AFP】「色目使いで男性の胸部を見るのは合法だが、女性の胸だと違法」--16日に英国の裁判所が下した判断が、インターネット上で検閲に関する大論争を引き起こしている。

 この一件は、英国で2003年に施行された性犯罪法(Sexual Offences Act)により、プールで水泳パンツ姿の男性を密かに撮影した介護施設職員ケビン・バセット(Kevin Bassett)被告(当時44)が2007年に有罪となったことが発端となった。

■「乳房と胸部の違い、陪審員への説明足りなかった」

 しかし、控訴審で事態は一変した。被告弁護団は、男性の胸部は同法の規定する「陰部」にあたらず、この法で胸といった場合には、女性の胸に該当すると主張した。デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)紙によると、これは「注目の」対象となる男性が太っていて、胸が「ふくよか」でもあてはまるという主張がなされた。

 この判決を審査したアンソニー・ヒューズ(Anthony Hughes)控訴院裁判官は先週、介護職員の裁判では、裁判長が陪審員に「乳房」と「胸部」の違いを明確に説明しなかったとして弁護団の主張に同意し、有罪判決を却下した。

 ヒューズ裁判官は、「(同法を採択した)議会の意図したところは女性の胸部であり、露出された男性の胸部ではなかった。前者は21世紀の水泳の場においてもいまだ『陰部』にあたるが、後者はそうではない」と判断した。

■「興味があったのは少女でなくて、父親のほう」と被告

 デーリー・テレグラフ紙のウェブサイト上には、この判断に対するさまざまな反応が寄せられ、同紙はいくつかを掲載し紹介した。

「女性が恥知らずに自分の体を見せびらかすのはよくて、男性がそれを見たら違法だっていうのか?ばかげてる」(投稿者:トム)

「スイミングプールに行って、袋に忍び込ませたカメラでほかの男性の写真を撮ることが、いまや『普通の行為』とみなされうる。今後はどうなることだろう…僕は国外に移住するね」(投稿者:ダグラス・タック)

 議論全体を軽蔑するような見解もあった。「英国ではセックスに関してあまりに幼稚なたわごとが多すぎる。男性も女性も心理的にひねくれているんじゃないかと思える」(投稿者:ジョン・P)

 プールでの事件に関する裁判で、撮影された側の男性は、隠された状態で自分と自分の娘に向けられていたカメラをどうやって見つけたかを陳述した。

「中年の男がベンチに袋を持って座っていた。自分と娘のほうに向いた角度に穴があるのに気づいた。男のほうに近づくと穴から、中に何か円形のものが入っているのが見えた。その瞬間、インターネットにうちの娘の画像が出回るところを想像した。そして、その中にカメラがあるのかとたずねた。彼は否定したが、私は怒りでふるえていた」

 バセット被告は最終的に撮影していたことを認めたが、少女を狙ったことは否定した。「興味があったのは男性なんだ」。長年ホモセクシュアルであることを隠していたと明かしたという。(c)AFP