【4月5日 AFP】アルゼンチンで、1976-83年の軍事政権下の弾圧による行方不明者から「盗まれた」子どもだったことが判明した女性が、誘拐されたとして養父母を訴えた裁判で4日、養父に禁固7年、養母に禁固8年の実刑判決が言い渡された。

 養父母を訴えたのは、マリア・エウゲニア・バラガン(Maria Eugenia Barragan)さんで、1978年生まれと分かっている以外、出生時の状況や、両親の消息は依然として謎に包まれている。

 バラガンさんの実の両親、レオナルド・ルベン・サンパジョ(Leonardo Ruben Sampallo)さんとミルタ・マベル・バラガン(Mirta Mabel Barragan)さんは、元左翼武装組織メンバーで軍政下の左翼勢力弾圧「汚い戦争」で行方不明になった約3万人のリストに載っている。

   「汚い戦争」では大勢の若い妊娠中の女性が拘束され、拘束下で出産したまま行方が分からなくなった。生後「盗まれた」約500人の子どもたちは、軍政に近い筋の家庭に渡された。

 2001年、DNA鑑定を受けたバラガンさんは、養父母であるオスバルド・リバス(Osvaldo Rivas、65)、マリア・クリスティナ・ゴメス・ピント(Maria Cristina Gomez Pinto、60)両被告が、本人の言葉によれば、実の親からバラガンさんを横取りした「誘拐犯」だと分かり、どうしても親だと思えなくなったという。

 その理由についてバラガンさんは、正式な養子縁組ではなかったこと、偽の出生証明書を使って出生日と出生場所を偽り、実の娘として届け出したことなどを挙げている。

 バラガンさんは前日の記者会見で、「赤ん坊を盗み、その出生についてうそをつき、日常的に不当に扱い、屈辱を与え、欺いてきた人物に対して愛を感じることができるか自問してください。私は『ノー』です」と語った。

 また、新生児だったバラガンさんを両被告に渡したとして、当時兵士だったエンリケ・ホセ・ベルティエル(Enrique Jose Berthier)被告も訴えられている。

 2月に始まった裁判は4日、3人の裁判官の合議制によって判決が言い渡された。バラガンさんの弁護士は、最高25年の禁固刑を求めていた。(c)AFP/Olivier Baube