【2月17日 AFP】郵便事業大手ドイツポスト(Deutsche Post)のクラウス・ツムウィンケル(Klaus Zumwinkel)社長ら同国実業家が、リヒテンシュタインに総額数十億ユーロを送金し脱税したとされる事件で16日、閣僚らから非難の声が相次いだ。

 ミハエル・グロス(Michael Glos)経済技術相は、地元紙のインタビューに対し、実業家は道徳をわきまえ、悪しき慣習は一掃すべきだと強調。「(彼らは)自らが社会の模範であることを意識しなければならない。さもなくば、市場経済は信頼されなくなる」と語気を強めた。

 アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相も15日、「私が想像していた以上の事態になっている」と述べている。

 捜査当局は15日、リヒテンシュタインの銀行を利用した脱税事件について、有力実業家が絡んだ事件を含め数百件について捜査中であることを明らかにした。
 
 16日の報道では、1000件前後の事件にこれまで900の捜索令状が発行されており、脱税の総額は数十億ユーロにも上ると報じられている。

 一連の脱税事件は、同国西部ボーフム(Bochum)の検察当局が、ツムウィンケル社長に脱税の疑いがあると発表したことに始まる。同社長は15日、社長を辞任し、ドイツテレコム(Deutsche Telekom)の監査役会長職も退いた。なお、捜査に協力する姿勢を示している。

 銀行秘密制度を有するリヒテンシュタインは、アンドラやモロッコなどと並び、経済協力開発機構(Organisation for Economic Cooperation and DevelopmentOECD)の「非協力的タックスヘイブン」のリストに挙げられている。(c)AFP/Geraldine Schwarz