【2月14日 AFP】修理に出したノートパソコンを米家電小売大手ベストバイ(Best Buy)になくされたとして、米国の女性が同社に対し、5400万ドル(約59億5000万円)の損害賠償を求める訴えを起こした。

 提訴した女性はワシントン(Washington)州の非営利団体(NPO)に勤務するRaelyn Campbellさん。AFPの取材に答えたCampbellさんによると、ベストバイに対する「天文学的」な賠償金額は意図的に設定したもので、最近米国のある裁判官が預けたズボンをなくされたとして家族経営のドライクリーニング店に求めた請求額と同一にしたという。

 Campbellさんは「夫婦でやってるドライクリーニング店がズボン一着をなくすこともあるだろう。けれど、米国最大の家電小売店が顧客保護ポリシーを持っていないこととは問題が違う。ベストバイに注意を促すとともに、パソコンを修理に出すときに個人情報が盗まれるリスクを明らかにしたかった」と述べた。
 
■「天文学的な請求額は個人情報保護への注意促進」

 ベストバイは米国、カナダ、中国に1300以上の店舗を展開している大型家電量販店。
 
 Campbelさんは昨年、同店で1年前に買ったノートパソコンを保証期間中に修理に出したが戻ってこなかった。しかもベストバイ側は紛失の事実を数か月間隠していたという。

「PCも中身も消えてしまったのに、彼らはわたしに黙っていた上、数か月後に報告した時にはわたしが1100ドルで買ったPCに900ドルの賠償をすると低く見積もってきた」。その後も何か月かやりとりが続き、いまだに賠償金は支払われていないという。弁護士に相談すると、個人情報を盗まれた疑いもあるといわれた。

 ベストバイを訴えたのは同社に注意を促すためだという。「賠償請求している60億円近い金額は、なくなったコンピュータと中身の値段ではない。ベストバイにこうした問題に取り組むきっかけを与え、個人情報盗難の危険を社会に認知してもらいたいからだ」(Campbelさん)

 AFPの取材に対しベストバイの広報担当Nissa French氏からは、「わが社の認識では、この女性にはすでに賠償額を提示し、1110ドル35セントを支払った。さらに謝罪の意味で500ドル分のギフトカードも受け取っている。今回の件でするべきことはし、学ぶところは学んだ。訴訟にまで発展したことについてはたいへん遺憾だ」と述べた文書が送られてきた。

 Campbelさんによると、第1回口頭弁論は15日に行われるという。(c)AFP