【2月11日 AFP】女性が親族以外の男性と公の場で2人で会うことが禁じられているサウジアラビアで、コーヒーショップのスターバックス(Starbucks Cafe)で男性と仕事の打ち合わせをした女性が同国の宗教警察に拘束された上、衣服などを脱がされて取り調べを受けた。同国の英字新聞アラブ・ニュース(Arab News)紙が前週、報じた。

 同紙によると女性は40歳の金融コンサルタントで3児の母。4日にスターバックスの首都リヤド(Riyadh)市内の支店内の家族用コーナーで、仕事相手の男性と打ち合わせを行っていたところを、布教・指導省の職員によって拘束された。厳格なイスラムの道徳規範に基づくサウジアラビアの法律では、親族以外の女性と男性は公共の場で同席することが禁じられている。

 本人の証言によると、女性は拘束された後にリヤドの拘置所へ連行され、衣服を脱がされて取り調べを受けた上、違法行為を行ったことを認める供述書に署名することを強要された。女性は「命が危ないかと思った。虐待されるか何かされるかと思った」ので、署名するしかなかったという。数時間後に夫が駆け付け釈放されたが、夫は目にした様子を「暴漢に捕まったかのようだった」と非難した。同紙によると、打ち合わせをしていた相手の男性はシリア人の金融アナリストで一緒に拘束されたままだという。

 事件の数日前には、極めて保守的なイスラム国であるサウジアラビアにおける女性差別について、国連(UN)が報告を発表し、女性の権利に関する専門家が同国訪問を開始したばかりだった。また、サウジ社会の中の女性と男性間の文化的交流を最も広めることができるのは女性ジャーナリストだとして、王族の1人が女性ジャーナリスト養成のための奨学制度設立を発表したばかりでもあった。

■宗教警察「ムタワ」、捜査中の市民の死に疑惑

 強権的なことで知られるサウジアラビアの宗教警察はムタワ(Muttawa)と呼ばれ、約5000人の人員を擁している。同国ではこの宗教警察による家宅捜査の際または拘束中に亡くなった多数の市民の死に関して、現在調査が進んでいる。内務省は2006年5月、宗教警察に対し、それまでのように拘束した容疑者を尋問せず、通常の警察に引き渡すよう要請し、宗教警察の活動を抑制しようとした。

 1日に発表された国連報告書は、サウジアラビアの女性は制度的、社会的な広範囲にわたる差別の犠牲者だと警告した。国連女子差別撤廃委員会(UN Committee on the Elimination of Discrimination against Women)はサウジアラビア政府に対し、男女平等と女性に対する暴力の排除を目指し具体的な対策を取るよう強く求めた。

■国連人権理事会特別報告官が訪問中
  
 スターバックスで打ち合わせしたために逮捕された女性の事件は、サウジ政府の招聘(しょうへい)で、女性に対する暴力に関する国連特別報告官のYakin Erturk氏が同国訪問を開始した直後に報じられた。

 Erturk氏は13日までの滞在期間中、サウジ高官や政府の人権関連グループ、諮問評議会(シューラ、Shura Council)のメンバー、研究者たちと会うほか、女性に対する暴力の被害者とも会見し、結果を国連人権理事会(UN Human Rights Council)に報告する。

 一方、同国のHassa bint Salman王女は5日、女性ジャーナリストの育成を推進するため、総額27万ドル(約2900万円)相当の奨学金制度を創設すると発表した。同王女は基金の設立目的についてAFPに対し「サウジアラビアの女性たちがジャーナリズムで働くことを奨励し、訓練と実践を通してプロのジャーナリストとしての技能を開拓するため」と答えた。

 同王女は女性ジャーナリストの役割について、同国の男性と女性の間の文化的コミュニケーションを促進できるとした上で、しかし「シャリーア(イスラム法)と穏健な社会規範に則る」ものでなければならないと述べた。

 ワッハーブ主義(Wahhabism)として知られる厳格なイスラム教義を採用しているサウジアラビアでは、女性は車の運転を禁止されているなど、女性に対する制約や束縛が激しい。公共の場では、女性は頭からつま先までを布で覆うことを強制されており、また男性の保護者の書面による許可を持たずに親族以外の男性と同席したり出歩くことも禁じられている。(c)AFP/Suleiman Nimr