【11月16日 AFP】第2次世界大戦後、米国に移住したウクライナ移民の男性が、ナチス・ドイツ占領下のポーランドでユダヤ人大量虐殺に関与していたとして、米国籍をはく奪されウクライナに強制送還されていたことが15日分かった。

 この男性は、1949年にウクライナから米国に移住したOsyp Firishchakさん(88)。米司法省によると、米国に移住した際、元ナチス(Nazi)協力者であることを隠し、戦時中の活動について虚偽の申告を行って米国籍を取得したとされる。

 同省は、1979年に米国内のナチス関係者を捜索する特別チームを創設。その結果、米国内に居住する元ナチス党員とその協力者107人の身元が特定された。Firishchakさんの身元も、同チームにより判明した。

 同省の説明によると、Firishchakさんは、ナチス占領下ポーランドのリボフ(L'viv)でユダヤ人10万人以上が虐殺された事件に関与したとされる。しかし、Firishchakさんは同事件への関与を否定。米国籍はく奪の決定を不服として2005年に提訴した。

 しかし、シカゴ(Chicago)の移民担当判事は「人間の品位に対する史上最も凶悪な犯罪行為を行った組織の関係者」として、Firishchakさんに対する国籍はく奪決定を支持。また、Firishchakさんの証言についても「信用できるものではない」と切り捨てたうえ、「言い逃れは許されない行為に対して弁明を試みるなど、恥ずべき行為だ」として、Firishchakさんの訴えを却下した。

 しかし、ウクライナ政府がFirishchakさんの受け入れに消極的な姿勢を示していることから、Firishchakさんの身柄はドイツかポーランド、または「受け入れる用意のあるその他の国」に移送されるものとみられる。

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