【11月12日 AFP】(一部更新)旧ポル・ポト(Pol Pot)政権時代の大量虐殺を裁くカンボジア特別法廷(Extraordinary Chambers in the Courts of CambodiaECCC)の捜査当局は12日、同政権ナンバー3だったイエン・サリ(Ieng Sary)元副首相(78)と妻のイエン・チリト(Ieng Thirith)元社会問題相(75)を、「人道に対する罪」などの容疑で首都プノンペン(Phnom Penh)の自宅で逮捕した。

 同日午前6時前、特別法廷の捜査官らを乗せた約10台の車両が元副首相の自宅に到着。多数の武装警官が周辺の道路を封鎖した後、捜査官が自宅に入って同元副首相を拘束、法廷施設に移送した。

 特別法廷のピーター・フォスター(Peter Foster)報道官によると、イエン・サリ元副首相には人道に対する罪と戦争犯罪、イエン・チリト元社会問題相は人道に対する罪の容疑がかけられている。

 イエン・サリ元副首相はフランスで教育を受け、ポル・ポト政権では外相として頭角を表した。1979年の虐殺に関し有罪判決を受けたが、1996年にゲリラ戦を続けるポル・ポト派を離脱、新政権に投降して国王の恩赦を受けた。その後はポル・ポト政権で社会問題相を務めた妻と、プノンペンに住んでいた。 

 法律家らは、虐殺に関して恩赦を受けていても同元副首相を別件で訴追することは可能とみており、ポル・ポト政権時代のほかの幹部4人とともに、特別法廷で裁かれる可能性がある。

 1975-79年のポル・ポト政権下では約200万人が死亡したり処刑されたといわれる。ポル・ポト元首相は1998年に死亡。これまでに、ヌオン・チア(Nuon Chea)元カンボジア人民代表議会議長、拷問で悪名高い政治犯収容所のカン・ケ・イウ(Kang Kek Ieu)元所長(通称ドッチ、Duch)が特別法廷によって身柄を拘束され、戦争犯罪と人道に対する罪で裁かれる予定だ。

 時代の大量虐殺を裁く特別法廷は国連(UN)とカンボジア政府の長年にわたる交渉の末に設置された。 公判は2008年に開かれる見通しだが、裁かれるべき人物が公判前に死亡する可能性もある。サリ元副首相も心臓疾患を患い、治療のため隣国タイのバンコク(Bangkok)を頻繁に訪れている。(c)AFP/Suy Se