【11月1日 AFP】米メリーランド(Maryland)州ボルティモア(Baltimore)の連邦地裁は31日、同性愛者への反対運動を展開するキリスト教原理主義教会が、イラクで戦死した海兵隊員の葬儀を抗議行動で妨害した問題で、兵士の父親に損害賠償金1100万ドル(約12億6000万円)を支払うよう同教会に命じた。

 判決を受けたのは、カンザス(Kansas)州を拠点とするウェストボロ・バプティスト教会(Westboro Baptist Church)。被告側代表として、1955年に同教会を創始したフレッド・フェルプス(Fred Phelps)牧師のほか、同牧師の娘2人が出廷した。

 同教会メンバーは、2006年にイラクで戦死した海兵隊員の故マシュー・スナイダー(Matthew Snyder)兵士(当時20)の葬儀が行われた際に、葬儀会場の前で同性愛者を差別する言葉や「兵士の死に感謝を」などと書かれたプラカードを掲げて抗議活動を行った。抗議の様子は、1週間の公判中にもビデオ映像が証拠として再生された。

 教会側の弁護人、ジョナサン・カッツ(Jonathan Katz)氏は、葬儀は公式行事であり、教会による抗議は憲法で保証された言論と宗教表現の自由だと主張した。

 しかし、裁判所は抗議行動がスナイダー兵士の父親であるアルバート・スナイダー(Albert Snyder)氏に精神的苦痛を与えたと判断。290万ドル(約3億3500万円)の賠償金に加え、「精神的苦痛と苦悩」を与えてスナイダー氏のプライバシーを侵害したとして、懲罰損害賠償金800万ドル(約9億2500万円)を同氏に支払うよう、教会に命じた。

 ウェストボロ・バプティスト教会は、軍隊を含め米国社会が同性愛者に対し寛容であることへの懲罰として米軍兵士が戦死しているとの主張を展開。これまでにも、国内各地でスナイダー兵士の葬儀時と同様の抗議行動を3万回以上行ってきたとしている。しかし、抗議行動が訴訟に至った例は今回のボルティモアが初めて。一方、今回の裁判では、同兵士の性的傾向については問題に付さなかった。(c)AFP