【10月31日 AFP】英ロンドン(London)の高等法院で開かれているダイアナ元英皇太子妃(Princess Diana)の死因究明審理で30日、元妃の乗った車両を追跡していたカメラマンが事故現場の写真複数枚を英大衆紙に30万ポンド(約7000万円)で提供していたことが明らかにされた。

 このカメラマンはパパラッチとして事故当日、ダイアナ元妃と交際相手のドディ・アルファイド(Dodi Fayed)氏が乗る車両を追跡しており、事故現場に最初に到着したRomuald Rat氏。写真のなかには、血だらけのダイアナ元妃や酸素マスクをつけて手当を受けている元妃の写真などが含まれていたという。

 Rat氏に先立ち、前日にはRat氏を乗せたオートバイを運転していたStephane Darmon氏の尋問が行われている。パリからのビデオ中継による尋問のなかで、Darmon氏は、事故の直後、Rat氏はパパラッチが事故車両に近寄らないようダイアナ妃らを守ろうとしていたと証言した。

 しかし、ダイアナ元妃が乗っていた車両の運転手アンリ・ポール(Henri Paul)氏の遺族の弁護士は、Rat氏は他のパパラッチに30万ポンドの特ダネ写真を撮らせないようとしていただけであり、ダイアナ元妃らを守っていたのではないとの見方を示し、その根拠として、Rat氏が事故現場のトンネルから「サン」紙に電話をしていた事実をあげている。

 一方、Darmon氏は、ダイアナ元妃らを乗せて運転する直前のポール氏の言動はアルコール依存症のようだったと証言した。事故当時、ポール氏は基準を大幅に上回る量の飲酒をしていたとされている。これについても、ポール氏の遺族側は、事故の責任をパパラッチではなく運転手のポール氏に負わせようとする「都合の良い証言」だと反論した。

 このほか、ダイアナ元妃とアルファイド氏が事故の前までの時間を過ごし、ポール氏の勤務先でもあったパリのリッツホテル(Ritz Hotel)側の弁護士、Ian Croxford氏も証言を行った。これによると、事故当日の朝、粗暴な運転で執拗にダイアナ元妃の車両を追い回すDarmon氏のオートバイが目撃されているという。一方、Darmon氏は、粗暴な運転はしていないと、これを否定した。

 また、審理では「チャンネル4(Channel Four)」テレビが放映した「サン」紙の編集者、Kenneth Lennox氏のインタビューの一部が流された。このなかで、Lennox氏は、「事故直後の生々しい写真」をRat氏が「サン」紙に送った経緯を説明している。 

「Rat氏は、これは大事故で、アルファイド氏は重傷のようだが、ダイアナ元妃は軽傷で全然重傷のようには見えないと言い、写真をすぐに私の電子写真デスクに送ると言った。時間を無駄にできなかったので、私は写真を見る必要があったが、基本的に写真は買うと伝えた」しかし、結局「サン」紙は、ダイアナ元妃が死亡したことを受け写真の掲載を見送った。

 一方、Rat氏はAFPのインタビューで、死因究明審理への召喚や、検視官からの連絡は受けていないと語り、「事故直後すぐに身柄を拘束されたし、ダイアナ元妃の写真を売ろうとしたことなどない」と述べ、「サン」紙側の言い分を否定した。さらに同氏は、エージェンシーGammaと契約していたので、写真を直接「サン」紙に売ることができる立場になかったと述べた。(c)AFP