【8月31日 AFP】米カリフォルニア(California)州のペンドルトン海兵隊基地(Camp Pendleton)で30日、イラク西部ハディサ(Haditha)で2005年に発生した米兵によるイラク民間人殺害事件の予備審問が行われた。

 同事件はイラクでの米兵による犯罪のなかでも最も悪質な事件とされ、事件との関連で海兵隊員8人が起訴されている。今回の被告、Frank Wuterich海兵隊軍曹(27)の罪状は殺人に関するものだけでも17にのぼる。このほか、Wuterich被告は自身の虚偽陳述容疑のほか、他の海兵隊員にも偽証を要請した疑いがもたれている。

 予審では、Humberto Mendoza下士官が2005年11月19日に起きた事件の詳細を証言した。

 同下士官によれば、事件当日、被告らの車列が道路脇の仕掛け爆弾攻撃を受けたことから、Wuterich被告が付近の民家を捜索し、爆弾攻撃犯を探し出すよう命じた。

 これに従いMendoza下士官らがある民家の扉をノックしたところ、Wuterich被告は「ドアが開いたら、室内にいる者を射殺しろ」と命じた。Mendoza下士官自身は、ノックにこたえて扉を開けた男性を射殺したという。

 続いて家の中を捜索したところ、奥の寝室に女性7人と子供数人を発見。Stephen Tatum下士官に「女性と子どもだけだ」と報告したところ、Tatum下士官は無言のままだったという。

 午後になって遺体を収容するため、Mendoza下士官が再びこの民家に戻ったところ、室内は遺体であふれかえっていたという。

 一方、Wuterich被告について、Mendoza下士官は「指導力のある偉大な海兵隊員だ」と証言した。

 しかし、反対尋問に立ったHaytham Faraj少佐は、室内にいたイラク人らを撃ったのはMendoza下士官自身だったとの生存者の少女の証言を語った。

 Tatum下士官については、前週行われた予審で、Mendoza下士官の証言は信憑性に欠けるとして、起訴罪状から殺人罪の取り下げが確定している。

 検察側は、爆弾攻撃で仲間を殺された怒りから、Wuterich被告らの部隊らが無差別殺人に走ったとみている。

 これに対し、被告側弁護人はWuterich被告は交戦規定に違反していないとの主張を展開する予定。

 同事件では海兵隊員4人が殺人罪、軍高官4人が事件に関する調査が不十分だったとして職務怠慢の罪で起訴されている。

 殺人容疑で訴追された4人のうち2人については、すでに起訴が取り下げられている。Tatum下士官についても起訴取り下げとなる見通しだ。

 Wuterich被告が予審審問の結果、軍法会議にかけられた場合、懲戒除隊および終身刑が求刑されるものとみられている。(c)AFP/Rob Woollard