【8月25日 AFP】英国で11歳の少年が16歳の少年に撃たれて死亡した事件で、同国におけるマイノリティー(少数派)の若年層を引き込んで膨れ上がる非行少年グループの問題が改めて問題になっている。

 英国中部リバプール(Liverpool)で22日夜、11歳の少年リース・ジョーンズ(Rhys Jones)君が、仲間とサッカーをしていたところを撃たれて死亡した。今年に入ってから銃犯罪による死者は8人を数え、その大半は、10代の少年ないしは成人間もない若者による犯行だった。

 国内での殺人発生件数は過去10年ほとんど変化していないものの、特に、ロンドン(London)やリバプール、マンチェスター(Manchester)、バーミンガム(Birmingham)といった大都市で、非行少年グループの問題が増加傾向にある。

 1996年には非行少年グループの数は、イングランドとウェールズで合わせて72で、構成メンバーの大半は25歳から29歳までの白人が占めていた。

 しかし近年変化がみられる。ロンドン警視庁の調べでは、2006年の時点でロンドンだけで169の非行少年グループの存在が確認され、24日に同庁が発表した報告書では、その数は257にまで膨れ上がっている可能性が指摘されている。また、構成メンバーも、黒人が大半を占め、低年齢化が進んでいる。

 今月初めに実施された地域社会と地方自治体の研究では、黒人が殺人事件の被害者になる可能性は白人の5.5倍だという数値が出た。専門家によると、非行少年グループは仲間を狙う傾向があるという。

 またロンドンでは、殺人事件の被害者の平均年齢が24歳から19歳に下がった。2006年に実施された学術調査機関MORIによる調査では、ロンドンの学校に通う児童の29%がナイフを携帯していることを認めた。

 若者を対象とした支援活動を行うロンドンの団体From Boyhood to Manhood Foundationの代表によると、大人たちは若者が現代社会に適応する手助けをせず、むしろ物質主義で自分勝手な、人間関係を築くことのできない人間になるのを助長しているといい、「若者たちは周りに大人もおらず、ほかにすることもないため非行少年グループに加わる」と説明する。そのため、若者支援で最も重要なことは、参加型の建設的な活動を与えることだと指摘した。

 一方で、若者が容易に銃器を入手できることも問題視されている。1996年にスコットランドのダンブレーン(Dunblane)で小学校に侵入した男が、5歳と6歳の児童と教師、合わせて16人を射殺した後、自殺したという事件を受けて、政府は拳銃の所持を規制する法律を制定した。こうした銃規制強化にもかかわらず、2006年の内務省の報告書では、非合法な銃が以前より容易に若者の手に渡るようになったと認めている。(c)AFP/Cyril Belaud