【8月10日 AFP】世界で最も有名な自動小銃、カラシニコフ銃(Kalashnikov)の製造元、ロシアのIzhmash社が、長年悩まされてきた「偽造銃」の対策に本腰を入れ始めた。

 このほど、ついにウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が同問題を真剣に取り上げ始めたとして、「大統領が動けば偽造問題は解決できる」と、事態の打開に期待感を示している。

■「正規品」は市場の1割だけ

 世界中で1年間に生産されるカラシニコフ銃は約100万丁に上るが、そのうちロシア製はわずか10万丁にすぎない。「本来の品質を保っているのはロシア製だけ」と主張するIzhmash社は、ブルガリア、中国、ポーランド、米国などで製造される無認可のカラシニコフ銃のため、同社が推定で年間3億6000万ドル(約425億円)の損失を被っていると指摘する。

 モスクワの東方1300キロにある工業都市、イジェフスク(Izhevsk)で今週、外国報道陣に向けて工場公開を行った同社の工場責任者、グロデツキー(Vladimir Grodetsky)氏は、「(偽造は)われわれにとって大きな問題だ。国際法にも違反している」と憤りを隠さなかった。

「偽造CDや偽造DVDに対しては神経質な国々が、カラシニコフ銃の偽造には無頓着なのには驚く」(グロデツキー氏)

 カラシニコフ銃の設計者、ミハイル・カラシニコフ(Mikhail Kalashnikov)氏(87)も、「名前とステータスだけが利用されている。これでは不公平だ」と不満を漏らした。

■「主犯」はブルガリアの企業か

 カラシニコフ銃の「偽造」問題は、東西冷戦時代、旧ソビエト連邦が対米工作として共産圏の国々に同銃の製造許可を与えたのがきっかけ。これらの国々では、1991年のソ連崩壊後も、カラシニコフに類似した銃の生産を続け、異なる名前で販売してきた。

 Izhmash社の工場で生産されるカラシニコフ銃の平均価格が400ドルなのに対し、こうした「不正規品」は概して安価だ。中国産なら80ドル、ポーランド産なら120ドルだという。

 専門家は、「旧ソ連政権時代、特許申請をしなかったことが彼ら(Izhmash社)のネックになっている」と指摘する。

 Ishmash社は、「偽造の主犯」としてブルガリアのArsenal社を名指しし、ブルガリア国内と米ラスベガスの工場で「不正規品」を生産していると非難している。Arsenal社はこれまで、反論を行っていない。(c)AFP/Dario Thuburn