【7月25日 AFP】リビアで400人以上の子どもをエイズウイルス(HIV/AIDS)に感染させたとして終身刑判決を受けたブルガリア人医療関係者ら6人は24日午前、本国送還され、ブルガリアの首都ソフィア(Sofia)に到着、直後に恩赦が下された。

■EUとの関係正常化へ

 6人の送還についてはリビア政府がいくつかの条件を提示しており、欧州連合(EU)が同国との関係正常化を公約してようやく実現。本国送還後、6人にはブルガリアのゲオルギ・パルバノフ(Georgy Parvanov)大統領から恩赦が下された。パルバノフ大統領は恩赦命令と併せ、「医療関係者らの無実を確信していた」と語った。

 看護師の1人であるKristiana Valchevaさんは、「帰国できる日をずっと望み、祈ってきました。祖国に帰ることができた、自由になれたと頭ではわかっていますが、まだ信じられない気持ちです」と喜びをあらわにした。

 仏政府専用機でセシリア・サルコジ(Cecilia Sarkozy)仏大統領夫人ならびに欧州委員会(European CommissionEC)のベニタ・フェレロワルトナー(Benita Ferrero-Waldner)対外関係・欧州近隣国対策担当副委員長と共にソフィアに到着した6人は、涙に暮れる家族らに迎えられた。 サルコジ大統領夫人とフェレロワルトナー副委員長は22日、6人の早期解放を訴えるべく、外交努力としてリビアを訪問していた。

 1999年の逮捕から本国送還までの8年間のうち、6人は3年間を死刑囚として過ごしている。

 リビア政府の高官は同日、AFPの取材に対し、「送還問題は解決した。欧州各国との国交正常化、ならびにEUとの関係正常化に向け、公約を取りつけた」と語っている。

 ジョゼ・マヌエル・バローゾ(Jose Manuel Barroso)欧州委員会委員長は、「(リビアのムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐に対し)本件が解決されれば、関係正常化に向けて最大限の努力をすると伝えてある」と語り、6人の本国送還に向けて両者が合意に至ったことを認めた。

 フェレロワルトナー副委員長も、6人の送還実現が「EUとリビアの新たな関係構築」への道を開くだろうとし、その詳細は明かさなかったものの、「喜ばしい日だ」と締めくくった。

■これまでの経過

 EUとリビアは、1988年に英スコットランド上空で起きた米パンナム機爆破事件にリビアが関与したとされたことをきっかけに関係が悪化。2003年に国連安全保障理事会(UN Security Council)が対リビア制裁の正式解除を決議するまで、関係正常化に向けた対話が停止していた。

 パレスチナ人医師1人(6月にブルガリア市民権を獲得)とブルガリア人看護師5人からなる6人は、リビアの地中海沿岸の都市ベンガジ(Benghazi)の病院で438人の児童らにエイズウイルスに汚染された血液を輸血し、エイズに感染させた疑いで1999年に逮捕され、2004年5月の第1審で銃殺刑の判決が下っていた。感染した児童のうち56人が死亡している。

 その後、2006年12月19日の再審でも判決は覆されなかったが、2007年7月17日にリビア最高司法委員会が6人を終身刑に減刑することを決定。これに先立って、被害者家族らとの間で数百万ドル規模の補償協定が結ばれていた。

 和解交渉に尽力したカダフィ大佐の息子が理事長を務める慈善活動団体・カダフィ基金(Kadhafi Foundation)によると、補償金額は児童1人につき約100万ドル(約1億2000万円)だという。

 6人の送還を知らされたニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)仏大統領は、送還実現のために自国もEUも「いっさい金銭的負担は負っていない」と強調。また同大統領は、25日にもリビアを訪問し、同国の国際社会への復帰を支援したいと語った。

 6人の送還を巡っては、リビアが新たに「EUとの関係正常化」「国内インフラ整備のためのEUからの経済支援」といった条件を提示したことから、一時実現が危ぶまれていた。(c)AFP/Diana Simeonova