【6月8日 AFP】武器取引を巡る英防衛航空大手「BAEシステムズ(BAE Systems)」のサウジアラビア王族に対する10億ポンド(約2400億円)の裏金疑惑で、経済協力開発機構(OECD)の調査に対し、英政府が国益を理由に一部情報を提供していなかったことが明らかになった。英法務長官の広報官が8日付けのガーディアン紙に語った。

 これは英航空防衛機器大手「BAEシステムズ(BAE Systems)」がサウジアラビアとの取引継続を目的に、スルタン・ビン・アブドゥルアジズ皇太子の息子バンダル(Bandar bin Sultan)王子に裏金を払っていたとされる事件で、発端は1980年代の英国最大の武器輸出計画「ヤママ(Al Yamamah)計画」までさかのぼるという。

 英国の重大不正捜査局(Serious Fraud Office)が長年捜査に当たっていたが、昨年12月に捜査は打ち切りになっていた。

 それに対し経済協力開発機構(OECD)は1月、英国の政府高官が当該問題についてのOECDの質問に答えなければならないことをふまえ、英国の決定に「重大な懸念」を示していた。

 英国は、贈賄調査は国の経済的関心や2国間の利害関係に影響されないとするOECD贈賄防止条約に加盟している。

 ピーター・ゴールドスミス(Peter Goldsmith)法務長官の広報官は新聞に対し、「OECDに自発的に提供する情報に国内外における英国の国益を損なう恐れのあるものが含まれていた。われわれは国の安全に混乱をきたすような情報を明らかにしていない。こういった目的では、OECDは実質的にパブリックフォーラムだ」と述べた。

 BAEシステムズとバンダル王子はいずれも7日、BAEシステムズが英国最大の武器取り引きを潤滑に進めるためバンダル王子に10億ポンドの裏金を支払っていたという報道を否認した。

 同社はあらゆる不正行為を否定し、「ヤママ計画」にかかわる支払いは「サウジと英国両政府の明確な承認」のもとに行われたと述べた。

 一方バンダル王子は、弁護士を通じて「不適切な手数料や裏金」を受け取ったことは「断固として否定」する声明を発表したとBBCテレビが伝えた。(c)AFP