【北京/中国 23日 AFP】中国南東部の重慶(Chongqing)の大規模開発地で、3年にわたり立ち退きを拒んでいる民家の所有者が注目を集めている。再開発が進む現場に取り残された呉蘋(Wu Ping)さん(49)の所有するれんが造りの2階建ての建物は、その写真が公表され、中国で最も有名な家になった。

■家の所有者は「市民としての自分の権利を守るだけ」

 裁判所は22日を立ち退きの期限としたが、中国のメディアに「頑固なくぎ」と称される呉さんは、抵抗を続けると宣言。「強情なのでも、規則に従わないわけでもありません。市民としての自分の権利を守ろうとしているだけです。最後まで抵抗を続けます」との呉さんのコメントを、国営紙「Legal Daily」が掲載した。ブルドーザーによる土地の整備が進み自分の家までたどり着くことができなくなった呉さんは、別の場所に住むことを余儀なくされている。

 これまで280戸が、開発業者の提示した補償条件で立ち退きに応じた。しかし、呉さんは補償による立ち退きを拒否したため、この問題は裁判所に持ち込まれた。地元裁判所は呉さんに対し、22日までに取り壊しの準備を進めるよう命じたが、呉さんは抵抗を続けており、当局の次の対応はまだ分かっていない。

■全人代で可決された「物権法」の運用が問われることとなる

 中国では、自治体と開発業者による土地差し押さえ問題を含む地権争いが多数起きている。この種の問題に対処するため、全人代は3月16日、私有財産を保護する「物権法」を採決した。

 呉さんの立ち退きをめぐる問題は、中国メディアやブログでの議論が活発になった。「『孤島』が残り続けることができるかどうかは、中国の法制度の指標となるだろう。政府が人権を尊重しない判断を下すことがあれば、物権法の信頼性が揺らぐことになる」と、China Youth Dailyは23日の社説で述べている。

 写真は、開発地に残された呉さんの家(2007年3月10日撮影)。(c)AFP/Mark RALSTON