【ロンドン/英国 24日 AFP】毒殺されたロシア連邦保安局(FSB)元情報局員アレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏と本を共同執筆した男性が、米連邦捜査局(FBI)の「身の安全」に関するアドバイスを受けてロンドン行きを取りやめていたことがわかった。24日付け英フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)紙が報じた。

■FBIが渡英の自粛を示唆

 「Blowing Up Russia: Terror from Within」をリトビネンコ氏と共同執筆した米国在住のロシア人、ユーリー・フェリシュチンスキー(Yuri Felshtinsky)氏は、同書の改訂版の発売にあわせ、26日にロンドンで開催される出版発表会と記者会見に出席する予定だった。出版社によると、フェリシュチンスキー氏から「FBIのアドバイスに従って」出席しない旨のEメールを受け取った。出版発表会は無期限に延期されたという。

■リトビネンコ氏の殺害後、著書に対する人気急上昇

 同書は、1999年にモスクワなどで発生した連続爆弾テロは、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後進であるFSBのしわざであると論じたもの。さらに、FSBが反体制派の暗殺や拉致を指揮していたと主張している。

 ロシア政府は、300人以上の死者を出したこの連続爆弾テロを「チェチェンの分離独立派によるもの」と非難し、これを口実にチェチェン共和国への軍事攻撃を開始したとされる。

 出版社の関係者は、改訂版の発売に踏み切った理由について、「初版が発売された頃、リトビネンコ氏の主張はばかげていると読者は思った。しかし今、彼が何を言いたかったのかをみんなは知りたがっている」と語った。また、「今や、KGBやFSBを非難しただけで面倒なことが起こるんじゃないかという風潮になっている」とも述べた。

 同書は、リトビネンコ氏が11月に放射性物質「ポロニウム(polonium)210」で殺害されたあと、ネットオークションの価格が30倍にまでつり上がっていた。

 リトビネンコ氏はロシア政府が自身の殺害を企てたとする遺書を残したが、ロシア政府はこれを否定している。

 写真はキエフで、リトビネンコ氏に関する本を見せる父親のWalter氏。(2006年12月21日撮影)(c)AFP/SERGEI SUPINSKY