【8月26日 AFP】(写真追加)メキシコ南東部タバスコ(Tabasco)州の沼沢地方の川の近くで25日午前3時(日本時間同日午後5時)ごろ、米国に入国しようとしていた250~300人が乗っていた貨物列車の貨車12両のうち8両が脱線転覆し、少なくとも6人が死亡した。当局者が明らかにした。

 メキシコ政府のルイス・フェリペ(Luis Felipe)市民保護調整官は当初この事故で22人が負傷したと話していたが、その後マイクロブログのツイッター(Twitter)でこの事故で病院に運ばれたのは18人だと訂正した。18人は19~54歳で、17人はホンジュラスから、1人がグアテマラから来ていたという。タバスコ州政府の報道官がAFPに語ったところによると、死者のうち4人はホンジュラスから来た人だったという。

 脱線した列車は「ザ・ビースト(The Beast、野獣の意味)」と呼ばれているもので、越境請負人から貨車の屋根の上に座る権利を買った人たちが乗っていた。事故が起きた場所は道路から遠く離れており、空からかボートでしか近づくことができない。救助隊は油圧機械を使い、金属車体を切り開いて生存者を捜している。

■豪雨の中スピードを出し過ぎ?

 タバスコ州の市民保護当局者はMilenioテレビに、負傷者は事故現場からボートで25分のところにある隣接するベラクルス(Veracruz)州ラス・チョアパス(Las Choapas)の病院に運ばれたと語るとともに、金属スクラップも積んでいたこの列車が事故を起こした原因はまだ分かっていないと述べた。また、転覆した車両を動かすにはクレーンが必要だが、車両の下からさらに犠牲者が見つかる可能性もあると述べた。

 メキシコのメディアは列車は豪雨の中でスピードを出し過ぎていた可能性があると報じている。

 貨物列車「ザ・ビースト」は、越境請負人に100ドル(約1万円)を超える金を払ってグアテマラに近い駅からメキシコ北部の駅まで貨物列車に乗る権利を手に入れたメキシコなど中米から来た人たちを運んでいる。メキシコの国家人権委員会(National Human Rights Commission)によると毎年約14万人がメキシコに不法入国して米国に向かっている。

 こうした人たちは数多くのリスクにさらされる。越境請負人は高額の金を要求し、メキシコ国内に入るとギャングがさらに高額の金をゆする。犯罪組織による強盗や強姦、殺人の被害に遭うことも多い。

 メキシコのエンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)大統領は7月、同国ではほとんど残っていない旅客鉄道サービスの再生を含む、3090億ドル(約30兆円)規模のインフラ近代化計画を発表した。(c)AFP