【1月23日 AFP】フランス北部ルーアン(Rouen)にある工場で21日、腐った卵のような強い臭気を放つガスが大量に漏れ拡散した。悪臭は22日午前までにパリ(Paris)を含む同国北部一帯を覆ったほか、海を越えて英イングランドにも到達した。

 ガスは「メルカプタン」と呼ばれる種類で、都市ガスに添加してガス漏れに気付きやすくする用途でも使われる。当局は人体に無害だとしているが、パリの緊急電話回線には一晩で1万人以上からの問い合わせがあり、悪臭による頭痛や喉の痛み、吐き気などを訴えた。

 ガス漏れが起きたのは、米投資家ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏の所有グループ傘下の「ルーブリゾール(Lubrizol)」が操業する工場。この工場では、工業用潤滑剤や塗料のための添加物を生産している。21日早朝に漏れ始めたガスの悪臭は、短時間の間に数百万人が住むフランス北部一帯に広がった。

 ガスは風に乗って人口が密集するセーヌ(Seine)川沿いを広がってパリに到達。その後、北方へと拡散し、イギリス海峡を越えて英イングランドに入ると、ロンドン(London)南部にまで到達した。イングランド南東地域の消防当局によると、ケント(Kent)南部の住民はドアと窓を閉め切るよう言われたという。

 パリ11区に住む女性は、泣き叫ぶ赤ちゃんの声で目を覚まし、悪臭に気付いたと話している。「午前4時くらいに目を覚まして、家中に充満するガスの臭いに気が付いたんです。玄関の外に出ると、臭いはもっと強くなったので、これが外から来ていることに気付きました」

 パリの悪臭は21日午後にはほぼ消えていた。(c)AFP/Rory Mulholland