【10月18日 AFP】オーストラリア沖で17日、ヨットでの単独航海中に遭難した男性が数日間の漂流の末、旅客機に発見されて無事救助されるという珍しい救出劇があった。

 豪シドニー(Sydney)からニュージーランドを目指してヨットでの単独航海を続けていたグレン・アイ(Glenn Ey)さん(44)のヨットは12日、「怪物のような」大波に飲まれてひっくり返った。「爆発に似た衝撃音」とともにアイさんは天井に叩きつけられ、船内は水浸しになってしまった。マストが折れ燃料も切れたヨットは漂流を続け、アイさんは「もう、これまでだ」と観念しながらも非常用位置指示装置のスイッチを入れた。

 遭難信号を受信した豪海難当局は、ちょうどそのとき豪シドニー(Sydney)に向かっていたカナダ・バンクーバー(Vancouver)発のエア・カナダ(Air Canada)の旅客機に、迂回して発信元の海域上空を飛ぶよう要請。同機は高度を1524メートルまで下げ、乗務員が双眼鏡でアイさんを探した。

 同機のアンドルー・ロバートソン(Andrew Robertson)機長が報道陣に語ったところによれば、乗客にも機内放送で漂流中の男性を捜索すると状況を説明した。現場海域に差し掛かると「捜索海域に入りました。どうぞ皆さんも窓から(男性を)探してください。何か見えたら乗務員に知らせてください」とアナウンスして協力を要請したという。

 シドニー沖270カイリ(500キロメートル)の上空で機体を大きく傾けて右に旋回した際、副操縦士がヨットを発見。アイさんは17日、現場海域に急行した救助艇に助け出され、無事家族の元に戻ることができた。ヨットは今も海を漂流したままだが、回収を急ぐ必要はないとアイさん。「しばらくは、木陰で休めれば十分幸せだから」と話している。(c)AFP