【1月16日 AFP】イタリア中部ジリオ(Giglio)島の沖合でクルーズ船「コスタ・コンコルディア(Costa Concordia)号」(11万4500トン)が座礁した事故は、島の住民を喜ばせるために霧笛を鳴らしながら島のごく近くを航行するという慣行が原因だった可能性が15日、当局者や目撃者の証言から浮上した。

 ローマ(Rome)に近いチビタベッキア(Civitavecchia)港からイタリア北部サボナ(Savona)港に向かっていたコスタ・コンコルディア号は13日夜(日本時間14日朝)、ジリオ島からわずか約300メートルの岩礁に乗り上げ、浸水した。

 一部の目撃者は、多くの乗船客が食事を取る中、照明で上甲板を明るく照らされた同船は、ジリオ島の住民たちに見守られながら島のごく近くを通過していたと話している。豪華クルーズ船が繰り広げるこの壮大な光景は、地元で「インキーノ(お辞儀)」と呼ばれていたという。

 15日のイタリア紙スタンパ(Stampa)は、ジリオ島のセルジオ・オルテッリ(Sergio Ortelli)首長がコスタ・コンコルディア号の船長に、過去に行われていたこのような航行による「素晴らしいスペクタクル」に感謝する2011年8月付けの手紙を掲載した。

■繰り返されていた島近くの航行

 同市長は14日、ジリオ島で記者団に「多くのクルーズ船はジリオ島の近くを通り、サイレンを鳴らして住民にあいさつする」と語り、ジリオ島から3~5キロを通るのがクルーズ船の通常の航路だと述べた。「照明された船を陸地から見るのは素晴らしいショーだ。今回はそれが裏目に出てしまった」

 しかしオルテッリ首長は翌15日、通常は、クルーズ船が島のごく近くを通ることはないと述べ、発言を修正した。「(島に近接する航行は)慣例的に行われていたわけではなく、決して旅程に組み込まれていたわけではない。常に安全な状況で行われていた」

 オルテッリ市長は、コスタ社のクルーズ船の船長の中には、ジリオ島に住んでいる引退したかつての同僚たちに「敬意を払う」人もいるが、それが行われるのは常に「安全な条件」の場合だけだったと述べた。

 トスカーナ(Tuscany)州のフランチェスコ・ベルシーオ(Francesco Verusio)主席検察官は、クルーズ船の船長は「あれほど島に接近するべきではなかった」と述べ、複数人を死なせた容疑と、全ての乗客が船から避難する前に船を離れた容疑で船長を逮捕したと語った。ベルシーオ氏は、船長が「非常にまずい方法で」ジリオ島に接近したためにクルーズ船が座礁したと述べている。(c)AFP/Francoise Kadri

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