【11月12日 AFP】「まるで地獄からの脱出だった」--メキシコ北部沖の太平洋上でエンジン室から火災を起こした米大型客船「カーニバル・スプレンダー(Carnival Splendor)」(11万3000トン)が11日、2隻のタグボートにひかれて4日ぶりに米カリフォルニア(California)州サンディエゴ(San Diego)に帰港した。

 スプレンダー号は7日、乗客3299人、乗員1167人を乗せて同州ロングビーチ(Long Beach)を出航し、メキシカン・リビエラ(Mexican Riviera)をめぐる7日間のクルーズに出たが、約300キロを航行した後の8日午前6時(日本時間同日午後11時)ごろ、メキシコ沖の太平洋上でエンジン室から出火した。

 火はすぐに消し止められ、けが人は出なかったが、自力での航行が不可能な状態となった同号はまる1日、洋上を漂流。9日にタグボートが現場に到着し、2日をかけて同号をサンディエゴまで牽引してきた。

 乗客の大半は米国人。帰還を喜び合う中からは、乗員たちの危機対処力をたたえる声も聞こえたが、豪華客船の乗客である彼らの多くにとって、お湯も温かい食事も出ず、トイレは流せないという4日間は悪夢だったようだ。乗客の1人、グレッグ・パリシュ氏(48)は「穴を掘っただけのトイレみたいにひどい悪臭だった。地獄からの脱出だった」と言い、これが最初で最後のクルーズだと述べた。

 別の乗客、マルケス・ホレースさんは米CNNに対し、文字通り「暗闇」の中に置かれたと語った。「(船内は)真っ暗、食べ物はマヨネーズを塗っただけのサンドイッチ、詰まったトイレ…囚人船で島流しに遭ったみたいで、本当にみじめだった」

 クルーズは5回目というマリア・アジラさん(41)は、約32時間にわたって漂流している間、ドラッグの密輸グループか、海賊に襲われはしないかと怖かったと語った。タグボートと一緒に米空母「ロナルド・レーガン(USS Ronald Reagan)が約2トンの飲料水や食糧を積んで到着した時には、「これで救われたと思った。騎兵隊が登場したみたいに見えた」と振り返った。(c)AFP/Tori Richards

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