【12月10日 AFP】韓国西岸沖合ではしけが香港船籍のタンカーに衝突し、積荷の原油が流出した事故で、同国政府は10日、59億ウォン(約7億円)の資金援助を行う方針を決めた。

 軍や警察、ボランティア、地元住民ら約9000人が重油除去作業に当たっているが、観光業に加え、カキやアワビの養殖業に多大な被害が出るとみられている。

 地元当局によると、原油流出によって160の養殖場が被害を受けており、現在も流出が続いていることから沿岸部の計445の養殖場が重油被害の危険にさらされている。現段階では、直接的、間接的被害を推測することは難しく、環境への影響を長期的にみると被害は計り知れないという。

 現場を訪れた朴明在(Park Myung-Jae)行政自治相は、泰安(Taean)の4区域を特別災難地域に指定すると述べた。指定された地域は、資金援助や補償を受けることができる。朴行政自治相は、59億ウォン(約7億円)を至急投入し、さらに国家予算を重油被害対策に当てることを明言した。

 この事故は7日、首都ソウル(Seoul)から南西90キロの沖合い8キロで、えい航船から離脱し流されていたはしけが、いかりを下ろしていた香港船籍のタンカー「Hebei Spirit」(14万7000トン)と衝突。はしけに積まれていた建設用のクレーンが、タンカーの重油タンク5つのうち3つに衝突し穴が開き、重油約1万500トンが黄海に流出した。9日の朝まで、タンクからの流出は続いた。

 約140隻の船と飛行機5機が、原油流出を防ごうとしたが、すでに海岸線では50キロにわたって漂着、さらに多くの原油が漂着するとみられている。聯合(Yonhap)ニュースによると、重油はすでに同国有数の養殖場がある加露林(Garorimman)湾まで達している。

 原油流出量は、過去最悪だった1995年の事故の約2倍にもなっている。

 新聞報道や沿岸警備当局者によると、事故直前にえい航船の船長に危険を警告することが難しかったという。英字紙コリア・タイムス(Korea Times)は、沿岸警備当局者が、えい航船の乗組員に対し、タンカーに急接近していると警告を2度試みたが、無線連絡ができなかったと報じた。

 泰安の沿岸警備当局者はAFPに対し、えい航船の船長の携帯電話にメールを送るよう指示されたと話した。

 新聞報道の中には、政府の反応の遅さを批判する声もあり、前回の事故の教訓がまったく生かされていないとの厳しい声も上がっている。(c)AFP/Jun Kwanwoo