【8月2日 AFP】ブラジル南部サンパウロ(Sao Paulo)のコンゴーニャス(Congonhas)空港で7月17日に発生したTAM航空(TAM Airlines)の事故機から回収されたボイスレコーダーの内容が、ブラジル議会調査委員会により公表された。ジェット機の速度を懸命に落とそうするパイロットが「おお、神よ(Oh my God!)」と繰り返す、生々しい当時の模様が明らかになった。

■機体を制御しようと試みる操縦士の「最後の声」

 7月17日、TAM航空3054便はコンゴーニャス空港の滑走路に着陸失敗、炎上し、187人の乗客乗員全員が死亡した。地上にいた12人も巻き添えとなり、死亡するという大惨事を引き起こした。

 着陸体勢に入ったTAM航空のエアバス320型機は、ブレーキの役目を果たす逆噴射装置と翼の空気抵抗を強めて減速する主翼のスポイラーが作動不能となる。

 ボイスレコーダーには、操縦士が両翼の逆噴射装置のうち片方しか作動していないことをコックピットから伝える。続いて「スポイラー、駄目」という声が続く。

 事故発生の直前、副操縦士は「頼む、動いてくれ!」と繰り返し叫び、「ああ、だめだ」という声とともにテープ音声は終わっている。この直後、同機は時速220キロで空港の貨物ビルに突入、爆発・炎上した。

 また、通信記録によれば、管制塔は操縦士に対して「暴風雨により(滑走路が)ぬれて滑りやすくなっている」と警告を発していた。コンゴーニャス空港の滑走路は、かねて距離が短いと指摘されていた。

■制御レバーは最後まで「加速モード」に

 一方、ブラジルの新聞Folha de Sao Paulo紙によると、操縦士は機体のエンジンを制御するレバーを「ニュートラル」の状態に戻しておらず、エンジンは最後まで「加速モード」にあったことが明らかになっている。

 同紙は、「操縦システムは『パイロットが着陸を回避しようとしている』と解釈していた可能性があり、そのため、2つのジェットエンジンは自動的に加速を開始。逆噴射装置やスポイラーなどのブレーキシステムも、タイヤブレーキも作動しなかった」可能性があると指摘している。(c)AFP