【7月31日 AFP】つばを吐く、ブーイングをする、大暴動を起こす・・・来る北京五輪で、中国人のファンたちが世界中の人々の目前で醜態を演じ、外交問題の火種になりかねない、と中国当局が懸念している。

 主催者側は、頭に血が上った観客らが、サッカーやバスケットボールの国際大会を幾度となく台無しにしてきた過去を繰り返すまいと、マナー向上作戦に数百万ドルを費やしてきた。国際大会を経験したことがない市民が多いこともあり「応援の仕方、列の並び方、スポーツマン精神」などの講座も開催してきた。

■福田首相もたまらず「助言」

 6月に行われた2010年サッカーW杯(2010 World Cup)アジア3次予選では、中国がカタールに1-0で敗れた試合の後、怒った中国人サポーターたちがブーイングしながら自国チーム選手らに瓶を投げつけ、さらに乱闘騒ぎを起こした。

 2004年のサッカー・アジアカップ(Asian Cup)でも、中国対日本の決勝で中国が敗れると、激高したサポーター数百人が日本選手の宿泊先のホテルに押しかけ、選手たちがホテルに戻るのを妨害。海外メディアでも中国人サポーターを非難する見出しが躍った。

 今年に入っての東アジアサッカー選手権2008(East Asian Football Championships 2008)でも、日本が中国に1-0で勝った試合後、中国人サポーターらが日本チームにやじを浴びせ、ごみを投げつけた。同様の光景は2007年に中国で開催された女子サッカーW杯(2007 FIFA Women's World Cup)でもみられた。日本選手に対する反感には、旧日本軍による中国侵略の過去への怒りが入り混じっているとされる。

 こうした中、福田康夫(Yasuo Fukuda)首相は5月、「大勢の中国の方が中国の応援ばかりする。それはそれでいいが、相手の国を批判するとかブーイングみたいなことをすれば、そうされた国の人たちは反感を持つ」と発言した。

■劉翔以外は見向きもしない 

 中国人のこうした観戦態度は、自国の五輪出場選手たちをも困惑させている。北京五輪のメインスタジアム「鳥の巣(Bird’s Nest)」で5月に開催された陸上選手権で、ファンらは110メートルハードル種目アテネ五輪金メダリストの劉翔(Liu Xiang)にのみ注目し、ほかの選手は無視。劉翔の出番が終わると、ぞろぞろとスタジアムを後にした。

 また、暴動対策には大量の警備を配置しているが、一方でスポーツマン精神やフェアプレーの概念を徹底させるのは、並大抵のことではない。スポーツ文化の普及が限られている中国では、大規模な大会で何が許され、何が許されないのかを見極める知識を持たない観客も多い。

 中国で開催されるゴルフ・トーナメントでは、ギャラリーが大声で話したり、ショットをする瞬間にも写真を撮るなどし、プレイヤーをいらいらさせている。ギャラリーの方角から携帯の呼び出し音や、大きないびきが聞こえてくることもある。(c)AFP