【7月31日 AFP】中国政府は多額の費用と数万人の人員を費やしてネット上の検閲システム「万里のファイアウォール」を築き、ネット上の反体制的言論を取り締まっている。だがこのシステムに小さなほころびができつつあるという。

 胡錦濤(Hu Jintao)国家主席は前年、インターネットセキュリティの重要性を指摘。社会主義体制の発展にはネットの統制を強化することが不可欠との認識を示している。

 30日には、北京五輪組織委員会(Beijing Organizing Committee for the 2008 Olympic GamesBOCOG)が「五輪期間中、海外メディアが使用するインターネットを検閲する」と発表したことから、指導部が「万里のファイアウォール」の固守を重視している姿勢がクローズアップされた。

 同委員会は、「五輪開催中、記者団に対し十分なインターネット・アクセスを提供する」とする一方で、中国で非合法とされているウェブサイトへはアクセスできないとしている。

 中国の元反体制活動家で現在は米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)の「チャイナ・インターネット・プロジェクト」を指揮するXiao Qiang氏は、「中国が万里のファイアウォールを運営すると聞いても、ほとんどの人はもはや驚かない。中国は、イメージアップのためにうわべだけの多くの努力を払ってきたが、ネットは別問題のようだ」

 専門家らは、中国ではネットを検閲するネット警察が4万人以上配置されているとみているが、一部のネットユーザーは米国やカナダのソフトウェアを使ってファイアウォールを突破しているという。

 ファイアウォールルを突破する方法には他にも多数あるが、第三国のプロキシサーバーを使用する方法が最も一般的だという。

 だが中国でこうした方法を知っているのは、ごく一部のユーザーだけだ。中国の数百万人のユーザーは自由にネットサーフィンすることがままならない状況にある。(c)AFP