【7月16日 AFP】北京五輪の開催が2001年に決定して以来、市内には大勢の旅行者を見込んで相次ぎホテルが建てられたが、開催を1か月後に控えた現在、予想外の予約の少なさにホテル・観光業界は焦りを見せ始めている。

 旧市街にある少数の例外を除き、市内のホテルはいずれも、五輪目当ての観光客の激しい争奪戦を繰り広げているのが現状だ。

 北京市観光局によると、現時点の予約率は最高級ホテルで75%。4つ星ホテルでは50%を切っており、3つ星ホテルは30%に留まっている。エコノミータイプのホテルになると、わずか10%だという。

■高値で部屋を貸すアパート経営者も

 一方で、旧市街の胡同(Hutong)と呼ばれる路地に最近できた高級ホテルは、そうした争いとは無縁の状態だ。五輪開催前には室料は4倍に跳ね上がるとみられている。

 旧市街で五輪景気を享受しそうなのはホテルのオーナーだけではない。経営するアパートを観光客向けに開放し、宿泊場所として提供する市民もいる。通常、3ベッドルームのアパートの賃貸料は月6000元(約9万2000円)程度だが、五輪開催中は1泊1500元(約2万3000円円)にもなるという。

 観光客向けに宿泊サービスを提供するサイト「Lodging@beijing」を運営するSong Zhiさんは「(旧市街では)宿泊場所の不足を耳にしています。アパート経営者は住民に立ち退きを要請し、五輪期間中に高い賃料で旅行客に貸す方法をとっています。経営者自身がアパートに住んでいる場合、五輪中はよそに泊まり、観光客に部屋を貸すそうです」

 そんな旧市街でも、「今のところ供給が需要を上回っている」のが実状だそうだ。

■多数のマイナス要因

 北京市観光局の張慧光(Zhang Huiguang)局長によると、現在、市内のホテルの客室数は33万6000室、ベッド数は66万台だ。観光局関係者の話では、五輪目当ての海外からの観光客は45-50万人で、これとは別に中国全土から120-160万人の旅行者が見込まれている。

 だが海外観光客の予測数については、楽観的過ぎたかもしれない。

 ただでさえ人口が過密している北京に観光客が押し寄せるとの報道に、旅行を取り止めた人もいるだろう。チベット(Tibet)騒乱を巡る中国と国際社会の緊張状態を懸念する人もいるはずだ。

 さらに五輪開催中の厳戒態勢や、ビザ取得条件の引き締めなども、観光客を呼び込む上ではマイナス要因となっている。

■すでに不調の兆し

 北京観光業の衰退はすでに5月の段階で、有数の観光地で顕著に見られている。例えば市外に位置する万里の長城(Great Wall)でも特に人気の慕田峪長城(Mutianyu)では、いつもは満車の駐車場が半分ほどしか埋まっていなかった。

 欧州の航空各社でも、北京五輪に向けた予約は芳しくない。中国便の予約増を目指して、エールフランス(Air France)とブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)は特別キャンペーンを実施中だが、エールフランスではすでに数便のキャンセルを余儀なくされている。(c)AFP